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ジャッキー映画製作年の謎【後編-9章】最大の難問『天中拳』


『【第9章】最大の難問『天中拳』』の画像

いよいよ初期ジャッキーの中でも、もっとも製作時の情報が少なく、時期を特定するのが困難と思われる作品『カンニングモンキー天中拳』を見ていきます。

時期を特定できる決定的な情報はありませんが、他作品との兼ね合いを考えつつ、出来る限り時期を絞って見たいと思います。

自伝の記述を確認

自伝「僕はジャッキーチェン」の今回の範囲を要約すると次のようになります。

ある程度自分のスタイルを取り入れることが出来た『蛇鶴八拳』だったが、やはり羅維の要求に弾圧されている感じを拭いきれなかったジャッキーはもう限界に達していた。

そして映画業界では、「ジャッキーチェンは興行成績を毒する俳優」というイメージが定着しつつあった。

なんとか状況を打破しようとウィリー・チェンが働きかけ、次回作は友人でもある陳誌華監督とコメディー『カンニングモンキー天中拳』を撮ることに。

2人はこの作品を従来の武芸者による敵討ち映画ではなく、ワイルドなドタバタ喜劇に仕立てあげた。
しかし、試写を見た羅維は本気で激怒しこの作品をお蔵入りにしてしまった。

『カンニングモンキー天中拳』はジャッキーが成功した後の1980年に公開され、マーシャル・アーツの最初の本格的パロディーであることに気付いたファンの間でヒットする。

羅維は、『カンニングモンキー天中拳』をお蔵にした後、すぐに『飛龍神拳』という3D映画の新プロジェクトに着手する。

このように自伝では、『蛇鶴八拳』と『飛龍神拳』の間に製作され、お蔵入りになったと書かれています。

出演者やスタッフ、ジャッキーの髪型なんかもパッと見、共通項が多いのでこの自伝の流れも不自然ではないのですが・・・。

どうもそう単純ではなさそうです。

公開情報とタイトル

『カンニング・モンキー天中拳/點只功夫咁簡單(1978)』の画像

スタッフや出演者など『蛇鶴八拳』と共通する部分が多く、同時撮影や連続撮影など何らかのつながりがあることは間違いないでしょう。

しかし、『蛇鶴八拳』自体も、以前検証したようにその時期を特定するのが難しい作品でもあります。

加えて、明らかに追加撮影されたと思われるシーンでの初期の中でもかなり後期と思われるジャッキーの容姿がさらに時期特定を困難なものにしています。

まずは、わかっていることから順に整理していきたいと思います。

現在判明している最も過去の公開日は、韓国で『烏龍大俠』というタイトルで公開された1978年11月11日というもの。これは当時の韓国の新聞でも確認したので、この時に公開されていたのは間違いないと思います。

下の画像は、韓国でのポスターと新聞広告になります。このポスターだけ見て劇場へ行った人は実際の作品を見て何を思ったんでしょうかね・・・。

『『カンニング・モンキー天中拳』韓国ポスター』の画像 『『カンニング・モンキー天中拳』韓国新聞広告』の画像

次が、1979年1月に台湾で公開。香港の新聞記事からの情報で、この時のタイトルが『一招半式闖江湖』。

次に、1980年7月1日に香港で公開。この時のタイトルは『點只功夫咁簡單』でした。

『『カンニング・モンキー天中拳』香港新聞広告』の画像

この3地区でタイトルがすべて違うということにも何か裏がありそうな気はしますが、これで『天中拳』の製作時期は1978年11月以前だと推定できます。

一応、韓国や台湾での公開後にあの顔と髪型が違う部分が追加撮影されたというのも考えてはみましたが、79年以降のジャッキーは羅維との契約問題で大モメしており、どう考えてもあり得ないと確信してます。また78年11月に韓国の新聞に掲載された広告に追加撮影時のものと思われるシーンが使われていたので、ここは追加撮影も含めて1978年11月以前の製作という大前提で以下の話を進めていきます。

あと、もう1つ手掛かりになるかもしれないのが、下のポスター。これは『蛇鶴八拳』の韓国公開時のものなんですが、バックのジャッキーはまさに『天中拳』のオープニング、上のポスターでも使われている場面のものではありませんか。

『『蛇鶴八拳』韓国ポスター』の画像

韓国では『蛇鶴八拳』は78年2月7日に公開されています。もしかしたらその後に再上映されて(今のところ再上映された情報はありません)、その時のものかもしれませんが、『ファイナル・ドラゴン』、『成龍拳』と続く羅維と韓国の合作作品第3弾と書かれていることから、初回上映の時だと私は思っています。

そうなると、少なくともオープニングは78年2月以前に収録されていたと推測できます。

新聞記事からの手掛かり

実は、製作段階での『天中拳』に関する新聞記事は1つしか見つかっていません。あとは、製作後のものと思われます。

以前にも別の章でご紹介しましたが、下が1977年07月14日の新聞記事です。

この時、ジャッキーは『飛龍神拳』の撮影をほぼ終えている状態で、記事には今後の予定として陳誌華監督の『蛇鶴八拳』や『天中拳(ここでは烏龍大俠)』を年内に完成させるというようなことが書かれており、特に『天中拳』に関しては、7/20に台湾で撮影を開始と書かれています。

しかし、手掛かりであることは間違いないのですが、単純に7/20頃が撮影開始時期とは言えない気がするのです。(詳しくは後述)もしかしたらこれは映画自体のことではなく、台湾での撮影がこの時にはじまった(始まる予定)ということなのかもしれません。

この後ジャッキーは『蛇拳』を製作、しばらくして『拳精』、『龍拳』、『酔拳』をかけもちし、『笑拳』へと繋がっていくのですが、そのころまで『天中拳』の記事やそれらしい関連記事が一切出て来なくなってしまいます。

『笑拳』の撮影が終了した頃の1978年12月19日の記事で、やっと完成済みの作品として『一招半式』という名前が登場します。

ロケ地検証

少しでも手掛かりが欲しいところなので、いつものように場面ごとにロケ地を検証していこうと思います。

まず冒頭部分でジャッキーが木の上で寝ていて、その後求人の張り紙を取るシーンはおそらく韓国ではないかと思われます。「華城行宮」内の「洛南軒」という建物だと思われます。(もしかしたら「錬武台」という建物かもしれません)

『『天中拳』ロケ地検証01』の画像

『『天中拳』ロケ地検証02』の画像

そのあと、ジャッキーが雇われる屋敷のシーンは、『成龍拳』や『蛇鶴八拳』でも使われている場所なんですが、韓国か台湾かハッキリと断定できません。しかし、こういった屋内のシーンはおそらく台湾ではないかと。建物の感じも台湾っぽく思います。

『『天中拳』ロケ地検証03』の画像

次は、『少林寺木人拳』でも蛇拳の尼僧とのシーンで使われている台湾。

『『天中拳』ロケ地検証04』の画像

次の石像などが並んでいる遺跡のシーンは、おなじみの韓国、洪陵・裕陵です。ここは『成龍拳』、『蛇鶴八拳』、『龍拳』などでも使われています。

『『天中拳』ロケ地検証05』の画像

『『天中拳』ロケ地検証06』の画像

この丸いお墓は英園というらしいのですが、この枯れ具合から見て、夏ではないことは確かだと思います。(「枯れ」ということは春でもないのかな?)

街中のシーンは「中國電影文化城」での撮影と思われます。下の画像の建物も良く見かけます。

『『天中拳』ロケ地検証07』の画像

こういった遺跡っぽい場所はほとんど韓国ですね。下も韓国の「水原華城」の城壁で、その下は「西弩台」と呼ばれる場所です。

『『天中拳』ロケ地検証08』の画像

『『天中拳』ロケ地検証09』の画像

で、後半にかけての野外でのアクションシーンなどはすべて台湾での撮影だと思われます、(急に手抜き・・・)

でも、これで『天中拳』は韓国と台湾でのロケで、韓国のシーンも結構多いこと、また韓国と台湾ともに季節的には秋のイメージに近く、全体的に出演者の服装を見ても夏ではなさそうと推測できます。

ジャッキーの顔・髪型検証

私はこの作品でのジャッキーの容姿は大きく3種類に分けられると考えました。

ジャッキーの顔 【A】

まず1つ目は、『蛇鶴八拳』の時のジャッキーに近いイメージで、うまく表現しにくいのですが、何かモッサリしてるというかなんというか・・・。

『『天中拳』ジャッキーの顔01』の画像 『『天中拳』ジャッキーの顔02』の画像 『『天中拳』ジャッキーの顔03』の画像

冒頭のシーンや、遺跡でのシーンなどで見られます。つまり韓国でのシーンですね。特に遺跡のシーンでは、眼元のメイクが『蛇鶴八拳』の頃にそっくりに感じます。

髪の長さは他のシーンよりも明らかに長めで、少しだけウェーブがかっています。『蛇鶴八拳』よりも長めに見える気もします。

ジャッキーの顔 【B】

この作品の大半を占めるのが、このBタイプ。作品中の表情が、なんともとぼけた表情が多く、髪型もヘンテコリンなので、他作品と比較しづらいのですが、イメージ的には『蛇拳』の時のジャッキーにかなり近い気がします。(『蛇拳』でも初期の撮影時期)

『『天中拳』ジャッキーの顔04』の画像 『『天中拳』ジャッキーの顔05』の画像 『『天中拳』ジャッキーの顔06』の画像

まだシャープさに欠け、垢抜けない感じ。髪は短く、全体の丸みも強くなってるように感じます。

あとは、なんとなくこのジャッキー、ヅラっぽく思えるのですが・・・。たとえば下の画像、たしかに表情が違いますし、右画像のような表情をすれば額が狭くなるのはわかるんですが、ズレすぎてません? ちょっとこれは確証はないんですが、おそらく初期のころに韓国(【A】のころ)で撮影し、しばらく時間が空いたため、その時の髪型に合わせるためにこのヅラを着用していたのではないかな、と思うのです。髪の長さも『蛇鶴八拳』(こちらは自毛だと思われる)と違いますしね。

『『天中拳』ジャッキーの顔07』の画像 『『天中拳』ジャッキーの顔08』の画像

ジャッキーの顔 【C】

そして、誰がどう見ても違う時期に撮られたと思うであろう後期のジャッキーが顔です。

『蛇鶴八拳』の時もそうでしたが、ほんと髪型が変わるだけで大分イメージが変わるのですが、この時のジャッキーはかなり後期のジャッキーに見えてしまいます。

『『天中拳』ジャッキーの顔09』の画像 『『天中拳』ジャッキーの顔10』の画像 『『天中拳』ジャッキーの顔11』の画像

この顔は追加撮影シーンと思われる、中盤とラストの野外戦闘シーンで見られるものですが、髪の長さは『龍拳』や『酔拳』で見られるものよりも若干長めに見えます。

また、中盤のシーンでは妙に日焼けしているようにも見え、風景を見た感じでは秋っぽく感じます。

龍君兒や石天とのコンビアクションのシーンはすべてこの追加撮影と思われます。おそらく『蛇拳』で好評だったアクションを追加撮影で取り入れたのではないかと推測してます。

スタッフや出演者

一応、『天中拳』に関わったスタッフや共演者が他の作品とどれだけ共通しているかも見てみました。

まず、スタッフはやはり『蛇鶴八拳』と共通する部分が多いです。監督が同じ陳誌華なので当然と言えば当然かもしれませんが。

キャストについては少しだけ興味深いことがありました。

わかっている範囲内で、『蛇鶴八拳』と『天中拳』に共通するキャストは、金剛・苗天・金正蘭など10人。

他のつながりが深い作品を比べてみると、『ファイナル・ドラゴン』と『成龍拳』で7人、『拳精』と『龍拳』で6人、『龍拳』と『笑拳』で7人、『蛇拳』と『酔拳』で11人が共通の出演者数です。

さすがに『蛇拳』と『酔拳』の数は多いですが、『蛇鶴八拳』と『天中拳』の共通キャストの数を見る限り、やはり2作品のつながりは深いと考えられます。

しかし、実は『天中拳』と『拳精』の共通キャストも、李文泰・田俊・石天・武德山など10人が共通していたのです。

ちなみに、『蛇鶴八拳』、『天中拳』、『拳精』の3作品に共通している人は3人しかいません。

他の作品をどう組み合わせても10人以上の共通キャストが存在するのはこの3パターンだけだったのです。

単純な仮説ではありますが、もしかしたらこれは『蛇鶴八拳』→『天中拳』→『拳精』という流れで製作されたということを物語っているのかもしれません。つまり『天中拳』は『拳精』にも近い位置で製作されたのではということです。

※下の表は、12作品を対象に2作品以上に出演しているキャストの一覧表になります。

『共通キャスト表』の画像

製作時期推測

ではそろそろ時期を狭めていこうと思います。

まずは、下の図をご覧ください。

『1977年から78年のジャッキーの動き(1)』の画像

濃い黄色の部分が、撮影が入っていないと思われる時期です。

ジャッキーの容姿から私は撮影時期は大きく分けて【A】から【C】の3つと推測していましたが、【B】に関しては77年7月の新聞記事と『蛇拳』の時のジャッキーの顔に非常に似ていることから、『蛇拳』直前の77年8月~10月頃ではないかと思っています。また、この時期はジャッキーや羅維の撮影に関する記事がほぼ無い状態だというのも、そう推測した一因です。

作品の大部分がその時期に撮影され、一度は完成したのだと思います。そして、自伝にあったように羅維がお蔵にしたのでは?

で、【A】の韓国での撮影がちょっと微妙なんですよね。77年1月に『成龍拳』や『蛇鶴八拳』のロケを韓国で行っていますが、はたしてこの時に撮影されたものなのか。

この韓国行きは何度か新聞に取り上げられていて、羅維の『成龍拳』や陳誌華の『蛇鶴八拳』については書かれていましたが、『天中拳』には全く触れられていませんでした。

また、『蛇鶴八拳』でこの時に撮られたと思われるシーンを見ると明らかに寒そうなんですよね~。一方『天中拳』は、そこまで寒くないようにも見えるのですが・・・

ただ、これだけのシーンを撮るためだけに韓国ロケというのもちょっと無いかな、とも思うので【A】の部分はやっぱり77年1月に『成龍拳』や『蛇鶴八拳』の韓国ロケ時と推測しておきます。

残りは【C】の追加撮影のシーンですが、こうなると『蛇拳』後の78年2月から『拳精』『酔拳』撮影前の3月頃が妥当なところでしょう。

『蛇拳』の香港公開は3月1日ですが、2月4日のプレ公開の時点でヒットは確実視されていたようですので、それを受けて羅維がお蔵にしていた『天中拳』の公開を考え、『蛇拳』の中で取り入れられていたコンビネーションアクションを追加しようと思い立ったのではないでしょうか。

ただ、追加撮影部分のジャッキーの顔と髪形を見ると、ちょっとその考えがグラつきます。顔立ちはやはり『龍拳』や『酔拳』に近いんですよね~。ただ、そうなると髪の長さや顔の痣などの説明がつかなくなります。

あと、確実な根拠とはいえませんが、羅維プロでの初期ジャッキー作品の撮影終了から韓国公開までの期間に注目してみました。

  • 『ファイナル・ドラゴン』-1976年12月中旬撮影完了→1977年05月12日韓国公開 【約6カ月】
  • 『成龍拳』-1977年03月中旬撮影完了→1977年09月24日韓国公開 【約6カ月】
  • 『蛇鶴八拳』-1977年07月下旬撮影完了→1978年02月07日韓国公開 【約6カ月】
  • 『天中拳』-1978年04月中旬撮影完了→1978年11月11日韓国公開 【約7カ月】
  • 『龍拳』-1978年08月中旬撮影完了→1979年03月03日韓国公開 【約6.5カ月】

いかがでしょうか、以前も羅維プロの撮影後から香港公開までの期間について触れたことがありましたが、意外ときっちりサイクルが決まっていたように思えます。

上記のサイクルもあながち偶然とはいえない気がします。

と、いうことで私の『天中拳』の製作時期を推測した結果は以下のようになりました。

『1977年から78年のジャッキーの動き(2)』の画像

ちょっとこれ以上は細かく絞り込むのは困難でした。この青色の時期内ということで今回は検証を打ち切りたいと思います。ふぅ・・・

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カテゴリ: ジャッキーチェン研究室.


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