ジェット・リーこと李連杰が契約問題や友人の死を乗り越え、いままでのうっぷんを晴らすかのように出演作を量産した時期になります。(1993年)
自らの映画会社「正東製作」の第1弾『方正玉』が大ヒットし、順調な滑り出しをしたジェット・リーは、正東製作と永盛娯楽の作品を交互に発表していきます。
『方正玉』
『獅王争霸(ワンチャイ天地争覇)』撮影後、リンチェイは92年のうちに「正東製作」創業作である『方正玉(レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 格闘飛龍)』の製作を開始。
コメディ要素が強い『方正玉』では、黄飛鴻と並び人気の高い伝説上の武術家・方正玉の若き姿をリンチェイが演じ、監督を元奎(コーリー・ユン)が担当することに。
『スウォーズマン/女神伝説の章』でも共演した李嘉欣(ミッシェル・リー)のほか、出演作が2,000本を超えると言われる大女優・蕭芳芳(ジョセフィーン・シャオ)をリンチェイの母親役に起用したほか、監督の元奎は本作で、『男兒當自強(ワンチャイ天地大乱)』でリンチェイの代役候補だった趙文卓(チウ・マンチェク)をデビューさせている。
趙文卓は新人とは思えない力を発揮、この後それを見た徐克によってリンチェイの後を継ぎ、晴れて黄飛鴻役に抜擢されることになる。
『獅王争霸(ワンチャイ天地争覇)』は92年末に台湾で公開され、シリーズ最高のヒットを記録。次いで翌93年2月には香港で公開され、2,700万香港ドルで年間7位の興行成績を収める。
続く『方正玉(レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 格闘飛龍)』も93年1月末に台湾で公開、こちらもヒットを記録し、翌93年3月の香港公開では、『獅王争霸』を凌ぐ3,000万香港ドルを稼ぎ出し、年間6位の大ヒットを記録した。
リンチェイの『黄飛鴻』で本格化した古装片ブームはここにクライマックスを迎える。
『方正玉(レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 格闘飛龍)』基本データ
【製作会社】 正東製作(イースタン・プロ)
【製 作】 李陽中(ジェット・リー)
【監 督】 元奎(コーリー・ユン)
【武術指導】 元奎(コーリー・ユン) 、元德(ユン・タク)
【出 演】
李連杰(ジェット・リー)、蕭芳芳(ジョセフィーン・シャオ)、趙文卓(チウ・マンチェク)、
李嘉欣(ミッシェル・リー)、胡慧中(シベール・フー)
【撮影期間】 1992年9月頃~12月(もしくは93年1月)
【公 開】
台湾:1993-01-30、香港:1993-03-04
韓国:1993-03-20、日本:1995-04
【興行成績】 香港:3,070万HK$(6位)
再生時間 2:22
再生時間 6:32
再生時間 12:40
再生時間 8:33
もうひとつの黄飛鴻『鐵雞鬥蜈蚣』
「正東製作」を順調な滑り出しでスタートさせたリンチェイは、黄飛鴻を演じられるのは自分だけだと言わんばかりに、『黄飛鴻 鐵雞鬥蜈蚣(ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ 烈火風雲)』の製作に取り掛かる。
これは、永盛娯楽との合作第1弾で、監督にヒットメーカー王晶(バリー・ウォン)を迎え、武術指導は袁和平(ユエン・ウーピン)と袁祥仁(ユエン・チュンヤン)の袁兄弟が担当。
徐克とのシリーズとはまた一味違った黄飛鴻を演じ、他の黄飛鴻作品を牽制。
『方正玉』のわずか1か月後に香港公開され、1,800万香港ドル(20位)とまずまずの成績を上げた。
『黄飛鴻 鐵雞鬥蜈蚣(ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ 烈火風雲)』基本データ
【製作会社】 永盛電影、正東製作(イースタン・プロ)
【製 作】 李陽中(ジェット・リー)
【監 督】 王晶(バリー・ウォン)
【武術指導】 袁和平(ユエン・ウーピン)、袁祥仁(ユエン・チュンヤン)
【出 演】
李連杰(ジェット・リー)、張敏(チョン・マン)、梁家仁(レオン・カーヤン)
袁詠儀(アニタ・ユン)、劉家輝(リュー・チャーフィー)
【撮影期間】 1993年(1992年12月か1993年1月~2月か3月頃まで)
【公 開】
台湾:1993-03-27、香港:1993-04-01、日本:1995-11-03
【興行成績】 香港:1,820万HK$(20位)
方世玉ふたたび
徐克による『黄飛鴻』シリーズは、リンチェイが降板したあとも趙文卓が引き継ぎ、4作目となる『黄飛鴻之四 王者之風(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ4 天地覇王)』が6月に香港公開されるが、やはりリンチェイ版黄飛鴻には及ばず、1,100万香港ドルで39位という成績に終わる。
このほかにも、この時期多くの黄飛鴻関連作品が公開されたが、どの作品も結果を残すことはできなかった。
続いて休む間もなく、自身の会社から『方正玉』の続編、『方世玉續集(レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 電光飛龍)』を発表。
前作からわずか5か月後の7月末に香港公開。
前作には及ばなかったものの、2,300万香港ドルで11位という好成績を上げる。
『方世玉續集(レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 電光飛龍)』基本データ
【製作会社】 正東製作(イースタン・プロ)
【製 作】 李陽中(ジェット・リー)
【監 督】 元奎(コーリー・ユン)
【武術指導】 元奎(コーリー・ユン) 、元德(ユン・タク)
【出 演】
李連杰(ジェット・リー)、蕭芳芳(ジョセフィーン・シャオ)、李嘉欣(ミッシェル・リー)、
鄭少秋(アダム・チェン)、郭藹明(エイミー・クォック)、計春華(チー・チェンホア)
【撮影期間】 1993年前半
【公 開】
台湾:1993-07-17、香港:1993-07-30、日本:1995-03-18
【興行成績】 香港:2,300万HK$(11位)
張三豐
量産体制に入ったリンチェイは、幻の『新龍門客桟』で共演するはずだった楊紫瓊(ミシェル・ヨー)との共演を実現、自身の「正東製作」から、『太極張三豐(マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限)』を発表。
監督に袁和平(ユエン・ウーピン)を迎え、今度は太極拳の創始者といわれている張三豊を熱演した。
また、中国拠点となったことで、この作品では『少林寺』などの最初期作品で共演した于海(ユエ・ハイ)や孫建魁(チャン・チェン・フー)との8年ぶりとなる再共演も実現した。
この作品は11月に香港公開され、1,250万香港ドルで33位という成績を残す。
『太極張三豐(マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限)』基本データ
【製作会社】 正東製作(イースタン・プロ)
【製 作】 李陽中(ジェット・リー)、崔寶珠
【監 督】 袁和平(ユエン・ウーピン)
【武術指導】 袁和平(ユエン・ウーピン)、袁祥仁(ユエン・チュンヤン)、谷軒昭
【出 演】
李連杰(ジェット・リー)、楊紫瓊(ミシェル・ヨー)、錢小豪(チン・シウホウ)、袁潔瑩(ファニー・ユン)、
于海(ユエ・ハイ)、袁祥仁(ユエン・チュンヤン)、孫建魁(チャン・チェン・フー)
【撮影期間】 1993年
【公 開】
台湾:1993-10-23、香港:1993-11-18、韓国:1993-11-20、日本:未公開
【興行成績】 香港:1,250万HK$(33位)
再生時間 2:51
再生時間 2:37
再生時間 1:34
再生時間 3:03
倚天屠龍記
さらに続けて撮った、「永盛娯楽」との2作目『倚天屠龍記之魔教教主(カンフー・カルト・マスター魔教教主)』は、再び王晶(バリー・ウォン)監督と組み、武術指導も兼ねる洪金寶(サモハン・キンポー)との初共演が実現。その他の共演者には王晶作品の常連組が名を連ねた。
当時香港映画界では、90年、徐克監督の『笑傲江湖(スウォーズマン/剣士列伝)』に端を発する武侠片ブームの中、数々の金庸作品が映像化されていた。
この作品も、原作は幾度となく映像されている金庸の武侠小説『倚天屠龍記』をもとに、パクリのヒットメーカー王晶がワイヤーワークを多用し映像化したものだった。
本作の撮影中、リンチェイは腰を負傷するが大事には至らず、無事完成。
当初から続編を製作する予定でスケジュールも組まれていたが、12月のクリスマス時期に公開されたにも関わらず、1,200万香港ドルで36位と興行成績は揮わず、続編の企画も流れてしまった。
『倚天屠龍記之魔教教主(カンフー・カルト・マスター魔教教主)』基本データ
【製作会社】 永盛電影、新寶娛樂
【製 作】 李陽中(ジェット・リー)
【監 督】 王晶(バリー・ウォン)
【武術指導】 洪金寶(サモハン・キンポー)
【出 演】
李連杰(ジェット・リー)、邱淑貞(チンミー・ヤウ)、張敏(チョン・マン)、黎姿(ジジ・ライ)、
洪金寶(サモハン・キンポー)、倪星(コリン・チョウ)、梁家仁(レオン・カーヤン)
【撮影期間】 1993年
【公 開】
香港:1993-12-18、韓国:1994-01-22、台湾:1994-01-29、日本:1995-11-03
【興行成績】 香港:1,200万HK$(36位)
再生時間 2:59
再生時間 1:11
再生時間 1:43:14
幻の続編についてはこちら。
■2012年5月27日更新
『倚天屠龍記 續集(仮)』
怒涛の公開ラッシュ
93年に香港で公開されたリンチェイ作品は6本にも及び、香港だけで1億2,000万HKドル以上の興行収入を挙げた。
また、出演料の相場は一本1,600万香港ドル(約2億3千万円)まで上がり、周潤發(チョウ・ユンファ)、周星馳(チャウ・シンチー)、張国栄(レスリー・チャン)、梁家輝(レオン・カーフェイ)らを抑え、成龍(ジャッキー・チェン)に次いで2番目となり、93年の総収入は1億香港ドル(約14億円)を超えた。
こうして、名実ともにトップスターへと上り詰めたリンチェイだったが、良いことばかりではなかった。
羅大衛に代わってマネージメントを担当していた義理の兄が急死してしまう。
しかし、もう立ち止まってはいられなかった。
リンチェイにはまだ撮らなければならない作品が山積みだったのだ。
こうしてリンチェイは、残りの契約を遂行すべく、翌94年も作品造りに没頭する・・・
93年総括
香港公開は6本といっても、実際に93年に撮影され、完成したのは4本だと思います。
それでも多いですけどね(^-^)
82年のデビューから91年までの10年間で6本、92年と93年だけで9本ということになりますので、ジェットにとってはかなりのハイペースですね。(香港公開ベースでのお話)
でも本当にようやく一連のゴタゴタから解放されて、映画に専念できるようになって良かった。
また、今までの遅れを取り戻すかのように色々な映画人と仕事をするようになり、また自身のプロダクション設立でより経験を積んだことで、短期でケガをせず(ダブルの使い方とか)映画作りを進められるようになったのでしょう。
ただ、『方正玉』シリーズ以降、今後数年間は大ヒットには恵まれず、低迷していくことになります。(それでも1,000万HKドル台はキープ)
商品情報
2012年になって、本章から2作品が再発売されましたが、いずれもデジタルリマスター化されず・・・
当然Blu-ray化の話しも聞こえてきません。
採算の問題なのでしょうか・・・ゴールデン・ハーベスト系はしっかりリマスター化されるんですけどねぇ・・・
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