日本が誇る和製ドラゴン倉田保昭氏の、生誕から現在に至る60余年の軌跡。
1984年、ニンジャブームも終焉を迎え、国内外での仕事が激減。しかし、サモハンの誘いで再び香港で活躍、人気絶頂のゴールデン・トリオと共演を果たしながらも、自社製作へ挑戦する変革期の5年間の足取りを追いました。
サモハン・キンポーとの契約
1984年 38歳:停滞
翌84年は、一転して出演が激減。映画出演はなく、単発でのテレビドラマ出演3本のみとなった。
うち2本は、人気テレビシリーズ『西部警察 PART-III 2時間スペシャル「燃える勇者たち」』、『西部警察 PART-III 最終回スペシャル「さよなら西部警察 大門死す! 男たちよ永遠に…」』のスペシャル版2編にゲスト出演。
もう1本は、人気の時代劇『必殺仕事人IV』にも単発でのゲスト出演だった。
この年、日本でも人気絶頂期にあった成龍(ジャッキー・チェン)、洪金寶(サモハン・キンポー)、元彪(ユンピョウ)らが来日したときに再会。サモハンから映画出演の誘いを受ける。
この出会いが、翌年以降の活躍に繋がることに。
倉田氏は、アクションクラブなどの活動も行っているため、一概にテレビや映画への出演が無いからといって、活動が停滞しているとは限りません。
しかし、この時期は、サモハンに仕事が無いと話をしたと著書でも語っているように、厳しい状況だったようですね。
1984年-日本-TVシリーズ
西部警察 PART-III 最終回スペシャル「さよなら西部警察 大門死す! 男たちよ永遠に…」
監督:小澤啓一
共演:石原裕次郎、渡哲也、舘ひろし1984年-日本-TVシリーズ
西部警察 PART-III 2時間スペシャル「燃える勇者たち」
監督:小澤啓一
共演:石原裕次郎、渡哲也、舘ひろし1984年-日本-TVシリーズ
必殺仕事人IV 第30話「勇次 投げ縄使いと決闘する」
監督:松野宏軌
共演:藤田まこと、三田村邦彦、鮎川いずみ
1985年 39歳:ゴールデン・トリオとの共演
この年、日本での出演は、『ザ・ハングマン4』や『特命刑事ザ・コップ』といったテレビシリーズへの単発ゲスト出演に留まり、海外での仕事が中心となった。
昨年、ジャッキー・チェンらとともに来日したサモハン・キンポーの誘いでサモハンの会社と3本契約を交わす。
5月には、初のゴールデン・ハーベスト系作品であり、ジャッキー・チェン、サモハン・キンポー、ユンピョウとの共演作『七福星(夏日福星)』の撮影に参加することになった。
今までショウ・ブラザースとの関係から、ゴールデン・ハーベスト関係の仕事に関わることがなかったが、この年ようやく実現することに。
スタジオ内が39度になるほどの炎天下の中、妥協を許さない洪金寶監督の撮影が続き、いよいよジャッキー・チェンとの初アクションシーンへと突入。
最初の1シーンには2日間を要し、64回のリテイク、そして2人とも手の指を骨折した上でのOKテイクだった。
その後も2人のシーン撮影が続き、ジャッキー・チェンのスケジュールが残り1日しかないという5日目の最終日の撮影がスタートする。
共演者であるユンピョウやアンディ・ラウ、ミシェル・ヨーらが見守る中、お互いに極限の集中力で、次々とOKテイクを重ねていく。
そして、最後のカットが撮り終わったのは、深夜1時を回った頃だった。
続くサモハンとのアクションシーンでも、容赦ないコダワリの撮影が続いた。
この『夏日福星』は早くも8月に香港で公開。同年公開された前作『福星高照(邦題:大福星)』に次ぐ第2位と大ヒットを記録した。
1985年6月10日、株式会社倉田プロモーション、有限会社K.Yインターナショナルを設立し代表取締役に就任。
その後、甄子丹(ドニー・イェン)作品でもおなじみのアクション監督・谷垣健治や、下村勇二、坂本浩一、「仮面ノリダー」のジョッカーなど輩出するなど、人材育成に注力しながらも、映画製作も手掛けていくこととなる。
10月から年末にかけてはサモハンとの2作目、『冒険活劇 上海エクスプレス(富貴列車)』の撮影がスタート。
同じくサモハン監督による、当時の香港映画のスターたちが多数出演したオールスター映画で、再びユンピョウとも共演。
また、オーディションに合格しデビューを果たした、日本出身のアクション女優・大島由加里(シンシア・ラスター)と初共演している。
この作品も翌年公開され、香港で2位のメガヒットを飛ばしている。
続けて朱延平監督の『悪漢列伝(歡樂龍虎榜)』へ出演。楊惠珊(ヤン・ホイサン)、藍心湄、そしてデビューしたての大島由加里という格闘三女性と共演。
また、この年はアメリカとの合作映画『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ(三島由紀夫)』にも出演するなど、大活躍の一年となった。
1985年-日本-TVシリーズ
ザ・ハングマン4 第21話「美人秘書の(秘)情報が連続殺人を生む!」
共演:名高達郎、佐藤浩市、渡辺祐子1985年-日本-TVシリーズ
特命刑事ザ・コップ 第12話「女刑事マリアが危ない!」
監督:佐藤武光
共演:藤竜也、MIE、宅麻伸1985年-香港-映画
七福星(夏日福星)
監督:洪金寶(サモハン・キンポー)
共演:洪金寶(サモハン・キンポー)、吳耀漢(リチャード・ン)、馮淬帆(スタンリー・フォン)1985年-台湾-映画
悪漢列伝(歡樂龍虎榜)
監督:朱延平(チュー・イェンピン)
共演:大島由加里(シンシア・ラスター)、陶大偉1985年-日本・アメリカ-映画
ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ(三島由紀夫)
監督:ポール・シュレイダー、他
共演:緒形拳、利重剛、坂東八十助1986年-香港-映画
冒険活劇 上海エクスプレス(富貴列車)
監督:洪金寶(サモハン・キンポー)
共演:洪金寶(サモハン・キンポー)、元彪(ユン・ピョウ)、鍾鎮濤(ケニー・ビー)参考資料
華僑日報, 1985-10-12
富貴列車開始
再生時間 3:35
『特命刑事ザ・コップ』氷室京介 – 「特命刑事ザ・コップ」出演映像 1985.5.24
再生時間 1:52
再生時間 3:02
再生時間 3:28
『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ(三島由紀夫)』トレーラー
再生時間 1:23
再生時間 3:54
後進の育成
1986年 40歳:門下生の活躍
この年、再び俳優活動は抑え目となるも、後進の育成に注力。
倉田プロモーション所属の、松井哲也が、『中華戰士(邦題:チャイニーズ・ウォリアーズ)』、『最佳福星(邦題:十福星)』への出演を果たす。
自身の俳優活動は、日本では、西田敏行主演の映画『植村直己物語』に出演。
香港映画では、ゴールデン・ハーベストのプロデューサーからお願いされ、『セブンス・カース(原振俠與衛斯理)』に一晩だけ特別出演。
主演俳優が誰かもわからないまま撮影に参加したが、後で主演俳優の中に周潤發(チョウ・ユンファ)もいることがわかった。
周潤發とは彼がテレビの新人俳優だったころに、面識はあったが、結局この撮影では会うことが出来ず、幻の共演作となった。
1986年-日本-映画
植村直己物語
監督:佐藤純弥
共演:西田敏行、倍賞千恵子、井川比佐志1986年-香港-映画
セブンス・カース(原振俠與衛斯理)
監督:藍乃才(ラン・ナイチョイ)
共演:錢小豪(チン・シウホウ)、張曼玉(マギー・チャン)、狄威(ディック・ウェイ)参考資料
華僑日報, 1986-03-13
写真、松井哲也、最佳福星に紹介参考資料
華僑日報, 1986-03-22
錢小豪(チン・シウホウ)、現在、セブンスカース撮影中
再生時間 6:31
『セブンス・カース(原振俠與衛斯理)』MATV予告編/チョウ・ユンファ特集
再生時間 1:00
1987年 41歳:ユン・ピョウ(元彪)との友情
この年サモハンとの第3作目『イースタン・コンドル(東方禿鷹)』で、2か月間のフィリピンロケにも参加。あまりの暑さで4キロほど体重が減少。その後香港へと移動し作品は完成する。
やはりこの作品も、興行収入10位とヒットを記録した。
これまでのサモハンとの3本契約の間、特に親密になったのは元彪(ユンピョウ)で、その後もお互いが香港・日本を行き来するたびに連絡を取り合い、食事をする仲になった。
1986年-日本-映画
植村直己物語
監督:佐藤純弥
共演:西田敏行、倍賞千恵子、井川比佐志1986年-香港-映画
セブンス・カース(原振俠與衛斯理)
監督:藍乃才(ラン・ナイチョイ)
共演:錢小豪(チン・シウホウ)、張曼玉(マギー・チャン)、狄威(ディック・ウェイ)参考資料
華僑日報, 1986-03-13
写真、松井哲也、最佳福星に紹介参考資料
華僑日報, 1986-03-22
錢小豪(チン・シウホウ)、現在、セブンスカース撮影中
再生時間 6:31
『セブンス・カース(原振俠與衛斯理)』MATV予告編/チョウ・ユンファ特集
再生時間 1:00
自社製作への挑戦
1988年 42歳:ファイナルファイト
日本映画で、宮沢りえの映画デビュー作『ぼくらの七日間戦争』に出演。
続いて香港では、劉鎮偉(ジェフ・ラウ)監督のコメディ作品『金裝大酒店』に出演。
海外での表演や、北京でテレビ出演するなどの仕事をこなしながらも、自身のプロデュース作品の準備を進める。
10月、自ら企画・原案・プロデュース・アクション監督・主演を務めた日本・香港合作『ファイナルファイト 最後の一撃』の撮影が香港でスタート。1週間ほど後に、日本へ場所を移して撮影が進められた。
総予算は500万HKドル(約8,300万円)と厳しい中、20日間のビジネスホテルでの宿泊にもかかわらず、旧友である楊斯(ヤン・スエ)が駆けつけ、演技派の任達華(サイモン・ヤム)も採用。長年暖めてきた企画の映画化がついに実現した。
1988年-日本-映画
ぼくらの七日間戦争
監督:菅原比呂志(現・菅原浩志)
共演:宮沢りえ、五十嵐美穂、安孫子里香1988年-香港-映画
金裝大酒店
監督:劉鎮偉(ジェフ・ラウ)
共演:鄭則仕(ケント・チェン)、吳耀漢(リチャード・ン)、張學友(ジャッキー・チュン)1989年-日本-映画
ファイナルファイト 最後の一撃
監督:後藤秀司
共演:任達華(サイモン・ヤム)、林建明(ラム・キンミン)
参考資料
華僑日報, 1988-04-08
七福星、表演舞台、北京で電視参考資料
華僑日報, 1988-07-28
写真、フジテレビ、今日離港。来月日本公開。フィリピンロケの西片。次は10月来港。猪木、松井?参考資料
華僑日報, 1988-10-12
自組公司、日本人監督で香港撮影開始、林、サイモン。23日に日本で開始。7,8日ロケして残りは香港で
『ぼくらの七日間戦争』TM Network GIRL FRIEND
再生時間 4:51
再生時間 2:40
再生時間 15:00
1989~1990年 43~44歳:充電期間
昨年撮影された『ファイナルファイト 最後の一撃』の編集作業も終わり、作品を完成させた倉田氏は、家族を連れて香港を訪問。メディアの取材などを受ける。
当初から、無国籍映画を目指して製作された本作は、世界50カ国以上で公開され大ヒットを記録。アジアだけでなく、アメリカやヨーロッパにおいても、倉田保昭の名を世に知らしめることとなった。
この後、2年近く映画やテレビドラマへの出演は無く、これからの新展開への充電期間に充てることに。
参考資料
華僑日報, 1989-03-26
子供を連れて来港。ファイナルファイト完成。製作費500万HK$、これまでも2本の西片製作したが資金がなく出品少ない参考資料
華僑日報, 1989-03-30
インタビュー記事、家4軒、車2台?家は3億参考資料
華僑日報, 1989-12-03
ファイナル以外にもう1本?ティ・ロン出演、東映との合作、年内には開始?
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