今回はタイトル通り、『プロジェクトA』でジャッキー・チェンが魅せた時計台落下の謎について検証してみます。
時計台落下の謎といっても、いわゆる「ジャッキーは〇回落ちた」とか「マースも落ちた」とかそういった話ではございません。
今回のテーマは「ジャッキーが落ちた時計台は何メートルの高さ」だったのか、です。
この時計台落下、日本では一般的に“25メートル”とされていることが圧倒的に多いのですが、実は諸説あるんです。
そもそも25メートルって、よくよく考えたらビル7~8階分ほどですよ。
さすがにコレは…、ということでいつものように気になってしまったんです。
というワケで、どーでもイイ人にとってはホントにどーでもイイ話かもしれませんが、
興味のある方は最後までお付き合いください☆
1.はじめに
一応前もって言っておきますが、このスタント、25メートルだろうが15メートルだろうが凄いことに変わりはありません。
この歴史的な名シーンにケチをつけるのが目的ではありませんのであしからず。
発端は、デアゴスティーニのジャッキー・チェンDVDコレクションで連載しているJCストーリーの原稿を書いている時に、
何気なく25メートルと書こうとしてふと疑問に思ったんです。
「ん?25メートルって高すぎない?」と。
一応、原稿執筆にあたっては“通説となっている細かい部分も自分なりにあらためて調べてみる”という信条を持っているので、
じゃあ調べてみようかなと思った次第です。
さて、前置きはこのぐらいにして、具体的に検証してみましょう。
2.諸説紹介
まずは、実際に時計台の高さ(もしくは落下距離)は何メートルと言われて(書かれて)いるのか、主なものを高い順にまとめてみました。
- ① 27メートル
- 「語れ!ジャッキー・チェン」内、SOJのゴリラ氏のコラムより。「諸説あり」とカッコ書きあり。
- ② 25メートル
- おそらくは劇場公開時のプレスやパンフレットが初出と思われる。
多くの書籍・雑誌やネットなどでも採用されており、現在の通説になっている。 - ③ 20数メートル
- 「スクリーン増刊 プロジェクトA特集号(1984/3)」などで記述あり。
ネット上の記事でもたまにこう表現されていることがある。 - ④ 20メートル
- ③と同じく「スクリーン増刊 プロジェクトA特集号(1984/3)」や
「奇蹟のジャッキー(1986/8)」に記述あり。 - ⑤ 18メートル
- 「ロードショー特別編集 まるまる1冊ジャッキー・チェン(各種)」ではこの高さを採用。
- ⑥ 56フィート(17メートル)
- アクション監督の谷垣健治氏がトークショーで「時計台から落ちるシーンの高さは56フィートらしいですよ。」と語る。(参考記事:谷垣健治氏ら日本が世界に誇るアクション監督軍団が有楽座閉館で『プロジェクトA』を語る)
- ⑦ 50フィート以上(15メートル以上)
- ジャッキーの自伝「I AM JACKIE CHAN」に記述あり。
- ⑧ 10数メートル
- 「デアゴスティーニ ジャッキー・チェンDVDコレクション 1号」にて、宇田川幸洋氏が記述。
- ⑨ 35フィート(10.7メートル)
- 撮影当時の香港の新聞に記述あり。
と、ざっと挙げるだけでこんなに色々あるんです。
個人的には撮影当時に数冊発売された「まるまる一冊ジャッキー・チェン」などに記載のある⑤18メートルあたりが妥当かな、
と思うのですがいかがでしょうか。
これは今回の件に限らないのですが、意外と初期の刊行物のほうが後年のものよりも事実に近いものを書いてたりする場合が多いんですよね。
おそらく『プロジェクトA』公開時に、あの東宝東和さんが「盛っちゃえ、盛っちゃえ!」と高さを水増ししたのではないかと….。
ま、いつものパターンですな。
基本的には一応これがオフィシャル?になると思うので、25メートル説が一般的になってしまったのではないでしょうか。
ちなみに海外ではこの時計台の高さについて書かれているWEBページを私はいまだに見たことがありません。
あと、この高さっていうのも“何の”高さか曖昧なのも諸説を生む原因なのかもしれませんね。
(A) 時計台自体の高さ(ポール含む)
(B) 時計台自体の高さ(建物のみ)
(C) ジャッキーの掴まり地点の高さ(時計の位置あたり)
(D) ジャッキーの足(または腰)からの距離(直前に降り立つ“へり”あたり)
例えば「〇メートルの時計台から落下」というのであれば(A)か(B)になるでしょうし、
「ジャッキーが〇メートルの高さから落下」であれば(C)か(D)になるでしょう。
ちょっと上の画像ではわかりにくいのですが、実際の映像や他の画像からの目測ではジャッキーの身長と比較して、時計台頂上のポールの高さは2.5メートルほどでしょうか。建物自体の頂点からへりまでで3.5メートルぐらいでしょうかね。ということは(A)から(D)の差は「5~6メートル」ほどあるのでは、と思います。つまりは〇メートルの前後の文章でこれぐらいの幅は出てしまうということになります。
これだけでもかなりの差があるので、より厄介ですねぇ。。。
3.〇メートルってどのくらい?
そもそも、“〇メートルの高さ”と言われても、それが頭の中でイメージしにくいというのが諸説を生む原因の一つかもしれません。
ということで、実際の建造物の高さなどを見ながら、時計台の高さと比較できる感覚を養いたいと思います。
まずは『プロジェクトA』の時計台画像を頭に焼き付けましょう!
時計台の画像は仰望のものがほとんどで、なかなか他の画像と比較できないのが難点です。。。
① 25メートル級
25メートルって7~8階建てビルぐらいのようです。かなり高いですね。
では、25メートル級の建造物を見ていくと…
バッキンガム宮殿前広場のクイーン・ヴィクトリア記念碑(イギリス)
コンスタンティヌスの凱旋門(イタリア・ローマ)
チチェン・イッツァのククルカンの神殿(メキシコ) ※24メートル
サンピエトロ広場のオベリスク(バチカン)
…いかがでしょうか。かなり高いです。あくまで私の感覚なのかもしれませんが、時計台のポール先端までと考えてもやはり25メートルってのは無いんじゃないかと思います。
上の画像では高さが実感できるように人物と写っているものをチョイスしました。ジャッキーの落下距離が25メートルではないことだけは確信してるのですが、皆さんはどう思いますか?
あと、参考に25メートル落下の動画を2本ご覧ください。
② 15~18メートル級
次に18メートル級です。18メートルと聞いてまず頭に浮かぶのは、そう、我らがガンダムです。
以前はガンダムの高さといってもリアルに想像できなかったのですが、お台場の等身大ガンダムが登場して想像しやすくなりましたね。(私は実物は見ていませんが…)
お台場のガンダム像(18メートル)
う~ん、デカい(苦笑)。
ほぼ八頭身なので、この肩あたりが16メートルほどになります。
時計台、こんなに大きいかなぁ~。。。
厳島神社の大鳥居(16メートル)
こちらは16メートルですが、大分現実的?な高さになってきたかもしれません。
博多祇園山笠のヤマ(16メートル)
クライミングボード/某所(15メートル)
実物大の鉄人28号/神戸(15メートル)
どうでしょう。正直よくわからなくなってきました(笑)が、落下15メートルと考えてもまだまだ高すぎるような気がします。ただ、時計台自体の高さが15~17メートルというのは現実的なラインかもしれませんね。
③ 10メートル級
ここまで見るとなんだか10メートルってそんなんでもないんじゃ…と思うかもしれませんが、10メートルでもかなり高いです。
次の動画は、テレビ番組の企画で某有名人が10メートルの飛び込みをする様子です。
いやいやかなり高いですね。
そういえば、お笑いタレントのスギちゃんがプールで10メートルの飛び込みやって胸椎骨折してましたからね~。
以下、ちょっとローカルですが10メートル級の高さを確認してみてください。
巨大ブランコ in みわ・ダッシュ村(11.3メートル)
JR飯山線下条駅前の下条茅葺の塔(11メートル)
高さ11メートルの玉入れ
ブラジル・砂の城(12メートル)
う~ん、微妙なラインですが、時計台落下はもう少し高いかも…という印象を受けました。
4.私が出した結論(推論)は?
検証記事というにはあまりにもアバウトな内容で大変申し訳ないのですが、私が収集したプロジェクトAの時計台画像から推察した高さは次の画像のようになりました。
上の画像はさほど仰視度合も高くないので、大まかではありますがこんなものではないでしょうか。
ズバリ私の出した結論は…
“ジャッキーは、高さ約17メートル(56フィート)の時計台(塔)から、
約11メートル(35フィート)落下した(たぶん)”
となりました。…ちょっと強引かなぁ。。。もしかしたらこれより低い可能性はまだあります。が、逆にこれより高いということは無いんじゃないかなぁと思う訳です。
ここでの時計台の高さはポール含めたてっぺんまでの高さです。私が敬愛してやまない谷垣さんが仰った高さですね。そして実際の落下距離は、当時の新聞報道のものがやはり信頼できるのではないかと思う訳です。
新聞報道の内容が間違っていることも多々ありますが、この報道は『プロジェクトA』撮影中の’83年5月末のものです(実際に落ちたのは6月1日)。天候不順が続いていることや、この時計台落下など撮影中の様子や進行状況が伝えられており、よりリアルなものと思われます。よく、公開時の記事に関しては製作者側がプロモーション目的で、話を持っちゃうのはよくあることですが、これは時期的に当てはまらないと思います。
あくまで、これは私の推論ですが、それでもやっぱり凄いっすよ!!ジャッキー!!!
そういえば、この落下でジャッキーは首の骨を折った、という説もチラホラ見かけますが、どこでそんな話になったんでしょうかね~。さすがに首骨折は無いでしょ。負傷はしたと思いますけどね。
話がどんどん大袈裟になっていくのが「レジェンド」の宿命かもしれません。
5.余談
そういえば、ブルーレイの特典映像にベイ・ローガンによるドキュメンタリーみたいなのが収録されていましたが、その中で紹介されている時計塔が全然別のものでしたね。
これは実際に現在でも香港にある時計塔みたいですが、なぜそう思ったん?
『プロジェクトA』の時計塔は、ゴールデン・ハーベストのスタジオに建設されたセットで、もちろん現在はありません。
時計塔の建設時期は『五福星』の撮影時期になります。当時、日本のテレビで放送された『五福星』のメイキング風景があるのですが、その時に建設中の映像が映っていました。
『五福星』の撮影は’83年の1月頃から3月頃なので、その辺りですね。で、実際にジャッキーが飛んだのが当時の記事によると6月1日のようです。
ジャッキーは実際の物語の流れと同じ順番で撮影することが多いようですが、『プロジェクトA』も大体本編と同じように撮影が進行していたようです。実は製作年表もほぼ出来上がっているので、いつか公開できたらな、と思います。
今回はちょっとネタ的な話になってしまいましたが、『プロジェクトA』に関しては、実はあまり語られていない秘話なども結構多いので、デアゴ連載の伝記では少しでもそれをお伝えできればと思っていますので、お楽しみに~(^▽^)/
ジャッキーが174cmで、画像は7等身位なので1218cmなのかなぁと単純に思いました
面白い!何メーター落下したなんて今まで考えたこともありませんでした。また諸説あることも知りませんでした。楽しい読み物として読みました。ジャッキーだけじゃなくてブルース・リーでも何かあればお願いします。
はじめまして。
PC入れ替えなどバタバタしていたもので、返信遅れましてすみません。
李小龍に関してはまだまだ勉強不足ですが、何らかの記事は今後UP予定ですので、気長にお待ちください!
非常に興味深い考察でした!個人的にはジャッキーがどうやって「この高さならイケる」と判断したのかが気になるところです。多分アバウトな計算だと思うのですが(笑)。
ありがとうございます!
おそらくライバル的な存在のサモ・ハンに急かされたことなども相まって、後に引けなくなって最後はノリ(勢い)で行っちゃったんでしょうね♪
おぉ、やっぱりそんなもんですか。
横のポールを登って行きますよね。
旗を掲げるポールの標準の最長が15mみたいなので、20m以上からの落下ってのは無いですよね。
自由落下している時間から考えても(あっスローしかないのかな?日よけにも引っかかってるし)
1.5秒なら11m、2秒で19.6mですからね。20m以上なら2秒以上落下しているはず。
x = 1/2×9.8×t×t
>旗を掲げるポールの標準の最長
それは考えもしませんでした!情報ありがとうございます。
>自由落下している時間
これも思いつきませんでした!
でも、落下速度での検証はなかなか難しそうですね~。
自分が首の骨の骨折云々を見たのはラッシュアワー3公開時の日本テレビ「ザ・ワイド」ですかね。その時にはありえんと思ったのですが、それ以降「世界の勇者達」でも確かそう言われるようになったと思います。もっとも最近はヒビや変形だけでも骨折と言うようになりましたので、広義の骨折の意味には入るかもしれませんね。
結構最近ですよね~。
確かに痛めたとは思うのですが、当時の報道や復帰スピードから考えても、ヒビも無いように思います。
ファンとしては「ジャッキー、すげぇぇぇ!」と言われることは嬉しいのですが、何とも複雑な心境です(苦笑)
次はポリスストーリーの電飾お願いします!
時間に余裕があればTRYしてみたいと思います!