張徹／チャン・チェ【スター名鑑】

1960年代中頃より主にショウ・ブラザースで監督として手腕を発揮、キン・フー（胡金銓）、リー・ハンシャン（李翰祥）と並んで、60・70年代を代表する名監督。

ジミー・ウォング（王羽）をはじめ、デビッド・チャン（姜大衛）、ティ・ロン（狄龍）、チェン・カンタイ(陳觀泰)、アレクサンダー・フーシェン(傅聲)など数々のスターや、ジョン・ウー（呉宇森）などを発掘し、ヒット作を連発。ショウ・ブラザースをアジア最大の映画会社へと発展させていく原動力となった。

70年半ばまでは、劉家良（ラウ・カーリョン）と唐佳（タン・チァ）を武術指導家として抱え傑作を次々と生み出していたが、共に喧嘩別れし低迷期に。のちに「五毒」と呼ばれる若き武打星を発掘し健闘を見せるも、かつてのほどの勢いは得られなかった。

70歳での監督作品『神通』で映画界から身を引き、2002年に香港電影金像奨「終身成就賞」を受賞した二ヵ月後、肺炎のため他界した。

1923年

浙江省で軍閥の家庭に生まれる。

1940年代

戦時中、重慶で中国政府の重慶国立中央大学教育部に所属し、戯劇活動に携わる。

戦後は上海に戻り、中国政府の文化工作に従事していたが、上海の劇場「文化会堂」の責任者となり、映画上映や演劇の演出などを手掛けるようになる。

1948年

台湾に渡り、『阿里山風雲』で監督デビュー（張瑛との共同監督）。

その後、台湾軍の演劇工作に関わりつつ、台湾で脚本家として活動。

1957年

香港に渡り、チャン・イーヤン（張易揚）のペンネームで映画評論や武芸小説などを執筆。

1960年

脚本家として「國際電影懋業公司」に入社。

1962年

ランラン・ショウ（邵逸夫）の誘いで、脚本主任として「ショウ・ブラザース」へ入社。67年までに20本以上の脚本を担当した。

1964年

ジミー・ウォング（王羽）主演の『虎侠殲仇』で初めて単独で監督をつとめる。また、この作品ではじめて武侠映画を手掛けることとなった。

1967年

同じくジミー・ウォング主演の『獨臂刀（邦題：片腕必殺剣）』を監督。香港の映画興行史上初めて百万香港ドルの収入を記録する大ヒットを記録。男性の力強さと悲劇的な末路を血みどろの暴力描写で描く「陽剛」路線を確立した。

ジミー・ウォングが不祥事を連発し、台湾へと去って以降は、デビッド・チャン（姜大衛）とティ・ロン（狄龍）という2大功夫スターを発掘。

1970年

『報仇（邦題：ヴェンジェンス 報仇）』で第16回アジア映画祭の最優秀監督賞を受賞。剣劇映画から現代アクションへの転換を図る。

1971年

デビッド・チャン、ティ・ロン主演の 『拳擊（邦題：フィスト・バトル／拳撃）』 が興行成績ランキング総合2位のヒットを記録。

1973年

張徹監督の最高傑作とも言われる 『刺馬（邦題：ブラッド・ブラザース／刺馬）』 公開。

1974年

ショウ・ブラザース傘下の映画会社「長弓電影公司」を中心に台湾で活動。

ラウ・カーリョンとともにこれまで共に映画作りを行ってきた武術指導家・タン・ツァ(唐佳)と 『洪拳與詠春(邦題：洪家拳対詠春拳）』 製作時に喧嘩別れ。

1976年

ラウ・カーリョン(劉家良)ともギャラ問題などで揉め決別。2人の有能な武術指導家を失い、以降、徐々に勢いが衰えていく。

1977年

監督作の低迷が続き、長弓電影公司をたたんで香港へと戻る。

1978年

郭振鋒（フィリップ・クォック）、江生（ジャン・シェン）、鹿峰（ルー・フェン）、羅莽（ロー・モン）、孫建（サン・ジェン）の５人を主役にした 『五毒（邦題：五毒拳）』 を発表。以降、彼らは「五毒」と称され、主演作品を連発していくが、当時登場した新星・ジャッキー・チェンの勢いには及ばなかった。

1983年

ふたたび台湾へと渡り、「長河影業公司」を設立。

1989年

これまでの30年に渡る映画人生を綴った「回顧香港電影三十年」を執筆。

また活動40周年を記念するため、 『義膽群英（邦題：ワイルド・ヒーローズ 暗黒街の狼たち）』 が作られた。監督はチャン・チェの弟子ともいえるジョン・ウー。チャン・チェ本人は製作に参加している。

1993年

最後の監督作『神通』を発表。

2002年

香港電影金像奨において、長年の功績が認められ「終身成就賞」を受賞。

その二ヵ月後、肺炎のため79年の生涯に幕を閉じる。